応接室にはアルクェイドさん、シエルさん、シオンちゃん、弓塚さん、先生、橙子さんがいた。式さんと幹也さんはどうやらいないようだ。

でも、

どうしてみんな無言なんだろう。

しかも僕を見たまま・・・・・

気のせいかな、

みんな、さっき息を飲み込んだまま吐き出していないような・・・・

「・・・・志貴、ちゃん?」

まず橙子さんが反応してくれた。

 

 

 

 

 

うえでぃんぐ DE 

 

 

 

 

 

「みんなが僕にこれを着るように言ったって言われたんだけど、僕以外の誰がこれを着るんですか?」

「いえ、あの・・・・・」

橙子さんが言葉に詰まっている。

ちょっと酷い言い方だったかな・・・

「あの、そんなつもりで言ったわけでは・・・・・」

あ、橙子さんが凄く狼狽えてる。

僕は橙子さんの元へ行き、橙子さんを後ろから抱きしめた。

「酷いこと言って、ご免なさい・・・何も橙子さんに八つ当たりしなくても良いのにね」

「ぁ・・・・・うん」

橙子さんがホッと一息吐いてリラックスしてくれた。

「マジヤバ・・・・志貴が綺麗すぎる・・・・」

「似合うと思っていましたが、次元が違いますね」

「白の姫君って志貴のための渾名だよ・・・・」

「・・・・・胸元が、刺激的すぎます」

「・・・やっぱり丘の上の王女様だったよぉ」

何だろう。

みんなの呟きがとても不愉快に聞こえる。

「僕、莫迦にされてる?」

カチャリと音がし、

「違うぞ。志貴のその姿を褒めているのだ」

いつもの橙子さんだ。

「褒められても嬉しくないよ」

「私は志貴がそれを着てくれたことを心から嬉しく思うぞ」

「え?」

「それは私が志貴のために作った作品だ」

「え?え?」

そこで気付いた。

考えてみればおかしな話だ。

僕にピッタリのドレス。しかもウエディングドレスなんてそうあるはずがない。

しかも僕のスリーサイズを知っている人なんて10人もいないはず。

先生、橙子さん、アルクェイドさん、シエルさん、シオンちゃん、おかーさん、おとーさん、宗じーちゃん、ゼルレッチさん・・・・

うん。やっぱりこれだけだ。

「そっかぁ・・・おねーちゃんが僕のために作ってくれたんだ」

それならもう少しくらいは着ていても良いかな、って気になる。

と、

「し〜き〜」

アルクェイドさんが椅子から立って僕に抱きついて───

バシュッ

アルクェイドさんと僕の間を何かが通り抜けた。

ソレは壁に当たる直前で霧散したけど、どこかで見たことのあるものだった。

「志貴さまにご迷惑が掛かりますのでそれ以上の蛮行はお止めください」

翡翠だった。

「へぇ・・・・」

アルクェイドさんがジロリと翡翠を見る。

が、

「バレルレプリカ・・・!?」

「まさか!?」

アルクェイドさんとシオンちゃんが同時に叫ぶ。

「志貴さまに負担の掛かることはお止めください」

翡翠の完全武装。

それは銃と刀。

銃は腰に巻いたベルトに付いているホルスターに。

刀はそのベルトに差されてある。

緊迫した雰囲気が漂う。

「刀も古刀・・・・しかもかなりの代物ね」

先生、いつの間に僕の隣に?

シエルさんと弓塚さんはいそいそとテーブルをどかしているし・・・・・

テーブル、洒落にならない重さだった気がするけど・・・・

「さて、これから撮影会を始めたいと思います」

パンッと手を叩くシエルさん。

「え!?」

「はい、志貴。これを持って」

「え?あ、うん・・・・ってこれブーケ」

パシャッ

フニュ、と、撮られた・・・・

先生がいつの間にかカメラを構えていた。

そしておね・・・・・橙子さんはビデオカメラ。

「良いわよー志貴。もう少しブーケを口元に当てるように」

「?こう?」

「ぅおっけーおっけー!!」

パシャッパシャッ

なんか、撮られまくってるんですけど・・・・

「志貴、少しブーケを抱きしめるようにしてくれ」

「あ、はい・・・・」

言われたとおりにブーケをキュッと抱きしめた瞬間、

「わわっ」

少し胸元の開いているドレスだからか、ブーケの持つ部分が間に入ってしまった。

「「「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

写真撮影とかしていた先生達どころか、戦闘を始めようとしていたアルクェイドさん達、止めようとしていたシオンちゃんまでがこっちを見て、

ゴブッという音が聞こえた瞬間、みんなが一斉に倒れた。

僕は慌てて秋葉と琥珀さんを呼んだけど、二人とも応接室に入った瞬間、同じように倒れた。

収拾がついたのはその日の夕方過ぎだった。

 

 

 

 

「お二方とも憔悴しきっているようですが・・・」

「七夜、これ・・・・」

「?っ!!!」

「流石七夜。鼻血も出さないか・・・私達は失血死する手前まで鼻血を出したぞ」

「────確かに、破壊力がありすぎますね」

「君専用のものはこれだ」

「!!!!!!!」

「───鼻血はださんがショートしたか」

「流石、お笑いキャラじゃない子は良いわね・・・・」

「そう言ったら私達は救われないじゃないか」

「・・・・・・ぁ」