カチャン

琥珀さんがボタンを押して数秒後、解錠の音がし、ドアが開いた。

「じゃあ、僕はすぐに行って来るから着替えの準備をお願いできないかな?」

「は・・・はいっ!」

拗ねていた琥珀さんが急にシャキッと姿勢を正して返事をした。

命令形で言った訳じゃないんだけど・・・・どうしてだろう。

琥珀さんが素早く僕の服とか畳んでいつでも着替えが出来るようにスタンバイを始めた。

いつもの琥珀さんらしからぬその働きっぷりに少し引いてしまった。

 

 

 

 

 

うえでぃんぐ DE 

 

 

 

 

 

廊下に出る。

「あら、以外と早かったのね、琥珀・・・・・・・・・・・・・・・」

あ、そうか。秋葉が外で待機して電子ロックを解除していたんだった。

「・・・・・・・・・・・・・」

秋葉も固まってる。

「秋葉」

「・・・・・・・・兄さん?」

そんなにたっぷり間をおいてもまだ僕が誰だか分からないのか。

それなら

僕は秋葉を少し冷たい目で見る。

そして少し偉そうに、

「通行の邪魔よ。お退きなさい」

「あ、はい。失礼しました・・・」

うわ、秋葉が素直に後ろに引いた。

しかも秋葉はどうして自分が下がったのか分かってないようだし。

小さく「え?え?」って言いながら首傾げてる。

しーらない。

僕は少し早足で応接室へと向かった。

階段辺りに来たとき、

「え?ええええっ!?兄さん!?」

叫び声が聞こえた。

 

 

翡翠が悲鳴を聞きつけたのか応接室の扉を開けてこちらへ向かってくる。

と、

「ぁ、失礼します」

翡翠は僕に気付いたが、一礼して早足で秋葉のところへ向か────

「──────志貴さ、ま?」

流石翡翠。気付かれたか・・・・・

「何とか着替えたけど、恥ずかしいからみんなに見せてすぐに逃げたいんだ」

ウエディングドレスって結構フリフリしているから段差のあるところは足下が怖いんだよね・・・・

だから逃げると言っても階段で捕まる確率が高い。

「そうですか────でしたら、わたしは志貴さまを守る剣となり盾となりましょう」

翡翠が敬礼をし、自然な動作で僕の斜め後ろに着いた。

「えっと・・・・気持ちはありがたいけど、大丈夫?」

「1分ほどお時間をいただければ、完全武装して参りますが」

「あ、うん・・・・それって、ゴテゴテしてない?」

「ご心配なく。武器を取ってくるだけです」

「じゃ、じゃあ・・・僕は応接室に行くから、逃げるまでに用意してきてくれるかな?」

「了解しました。志貴さま、御武運を」

翡翠はピシッと敬礼をすると音を立てずに自室へと走り出した。

「─────琥珀さんも翡翠ちゃんも急に性格が変わったな・・・・」

まぁ、いつも二人とも凄いんだけど・・・・翡翠の完全武装って、もしかして先輩倒せない?

そんなくだらないことを考えながら階段を下りる。

そして、応接室の扉の前に立ち、

「・・・・・・失礼します」

深呼吸の後、一気に扉を開けて中に入った。