ある日曜の午後。

志貴はアルクェイドに呼び出され、マンションに来ていた。

そこにあったのは色々な洋菓子、和菓子が並べられていた。

「ねえねえ志貴」

薯藷饅頭をほおばる志貴はニパッと笑うアルクェイドにちょっと首を傾げる。

「ん〜な〜に?アルクおねーちゃん〜〜」

「私のモノになったらいくらお菓子食べても虫歯にならないよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴクリ」

ゆっくりと饅頭を飲み込むとキョトンとした顔でアルクェイドを見る。

「もう・・・・んっ、と。これからは和菓子も洋菓子も食べ放題!しかも私のおごりよ!」

志貴の頬に僅かに付いていた餡を舐め取ると、拳をグッと固めて力説した

「え?え?」

「甘酒もつくよ〜」

ゴクリ・・・・・・

志貴の喉が鳴る。

「ひ、酷いよアルクおねーちゃん・・・それじゃあ僕が食い意地張ったお子さまみたいじゃないか!」

そう怒ってみせる志貴だったが、

――――――尻尾がパタパタしてる・・・・・・

アルクェイドの目には志貴にあるはずのない不可視の尾がパタパタと揺れているのが見えた。

「勿論私が志貴を縛る事なんてないし、私の血を与えるだけだから志貴にとっては良いことずくめよ?」

「うううう・・・・・・・・」

志貴は揺れていた。

アルクェイドのことは好きで、和菓子も洋菓子も食べ放題。そして甘酒までセット・・・ここまで至れり尽くせりでリスクも殆どない・・・

「それにこれ以上年もとらないんだよ?」

「え?」

志貴が固まった。

―――年をとらない・・・

志貴にとってそれはかなり問題だった。

「―――それは、困るぅ・・・・・・」

「え!?」

俯きがちに呟く志貴に焦るアルクェイド。

「だって・・・僕、二十歳にはなりたいもん・・・大人になりたいもん・・・・・・」

志貴は涙目でアルクェイドを見る。

そしてその台詞はアルクェイドの脳内で微妙な三段論法によってある言葉に置き換わっていた。

大人になりたい→成人=結婚OKの年齢→プロポーズ

アルクェイドは鼻から何かが流れた気がした。

―――鼻血がツウッと流れていた。

「志貴・・・ごめんね、わたし志貴の気持ち知らないで・・・」

アルクェイドは鼻血を拭こうともせず、志貴に優しく微笑みかける。

「アルクおねーちゃん・・・鼻血・・・」

「気にしないわ」

アルクェイド即答

確かに流血に深い意味など持っていなかった。

何故鼻血が出たのか。

そんなことは目の前にいる志貴のラブリーさから見れば些細なことだから。

だが、

「あう・・・お鼻詰まっているの?」

志貴は違う見方をしていた。

「?」

アルクェイドは志貴の質問の意味が分からない。

そしてアルクェイドが首を傾げたため、志貴が取った行動は・・・・・・

「あのね、この前おっきい病院に行った時にね風邪ひいた赤ちゃんにその子のお父さんがこんな事をしてたよ」

そう言って―――

 

 

志貴の唇が―――

 

 

アルクェイドの鼻へと向かい―――

 

 

チュゥッ

 

 

鼻血を吸い出した。