「くっ・・・チェックを受けたばっかりに」

「触りたい・・・あの頬を突いて頬ずりしたい・・・」

「「「本気で禁断症状を起こしてるし」」」

苦悶の表情を浮かべ、呻く二人を見てあそこまではなっていないだろうと自問自答する三人組。

そして、別の所では・・・

「嗚呼・・・こうなったら殺るしか!」

「止せ!本気で人殺しになったら拙いだろうが!だいたい誰を殺るんだ?!」

「止めないで乾くん!遠野くんが・・・志貴くんが!!」

「おちつガフッ!!ぅお、お前等!見てないで手伝え!!」

『無理』

出口付近に避難していたクラスメイト全員が小声でそう言った。

「なに避難してるんだよ!・・・ゆ、弓塚?」

自身も逃げようとしたが、弓塚に肩を掴まれる。

「乾くんを殺れば志貴くん戻ってくるかも・・・・」

「俺様ピンチ?!!!」

―――完全にバーサクモードに入った弓塚のとばっちりを喰らい、有彦は星になりかけた。

 

 

ベッドに倒れ込み、小さく息を吐く。

ドアはロックしているので大丈夫。

「――――やっぱり女学校は拙いよ・・・・」

ため息が自然と出た。

カーテンが揺れ、風の訪問を告げる。

視線を窓に向ける。

サァァァァッッ

軽い突風が室内に吹き込む。

「・・・・・・・・」

その風に乗って、何かが僕に囁いている気がした。

「誰か、僕に会いに来てる・・・?」

体を起こしてベッドから下りる。

「・・・・・・・・・・」

窓辺に立つ。

サァァァァッッ

また風が吹いた。

「え?式さん達が外に来ているの?」

慌てて外を見る。

何も見えない。

でも、向こうに式さん達がいるのは間違いない。

「行かないと」

窓から身を乗り出し、そのまま跳ぶ。

ザアアアアアアアッッッ

風が吹き、風が体を包む。

一瞬、僕の周辺を何かが包んだ気がしたと思うと、体が軽くなった。

風に乗って着地しようとした所より数メートル離れた草むらにゆっくり降りる。

まるで抱き上げられていた体を地面にゆっくりと下ろされるように。

「────ありがとうございます」

僕は気配のする所にお礼を言って式さんがいると思われる所に向けて走った。

 

 

「はぁ・・・・」

パタンとファイルを閉じる。

ファイルから数枚程抜き取った写真を懐にしまう。

「────まあ、良いけどね」

幹也はため息を吐き、ファイルを受け取る。

「やっぱり、しーちゃんが悪巧みに巻き込まれないうちに忠告しておかないと・・・」

「だからといって正面突破した日には志貴くんの立場が拙くなるよ」

「くっ・・・・・・・ならどうすればいいのだ?!」

「呼び出すってのが一番手っ取り早いんだけど・・・・」

そう言って幹也は門の奥、学園の方をジッと見る。

「・・・・・暫く待つしかないのかな」

人の来る気配のない門前で暫く佇んでいた二人だったが、

「!?」

何か気配を感じたのか式が辺りを見回す。

そして

「上か!」

式が塀の上を見た瞬間、

バッッ

塀の上から志貴が飛び降りてきた。