日曜の昼下がり。
いつもは静寂とはほど遠い状態に置かれているはずの屋敷だったが、今日はいつになく静かだった。
遠野秋葉は応接間で読書をし、翡翠は応接間のテーブルのセッティングを行っている。
琥珀は四季を捕まえて裏庭で植物の手入れをし、
アルクェイドとシオン、シエルは部屋でとりとめのない会話をしていた。
そして、
「・・・・・・」
「・・・・・・」
志貴と七夜は部屋で惰眠をむさぼっていた。
志貴志貴〜お昼寝観賞〜
「そろそろ・・・かしら」
秋葉は本を閉じると席を立つ。
「翡翠。付いてきなさい」
「はい」
秋葉が部屋を出るとその後を等間隔で付き従う翡翠だったが、
「秋葉様。姉さんはいかが致しましょう」
「放っておきなさい。恐らくもう向かっているかも知れません」
溜め息混じりの台詞に翡翠は小さく頷く。
以降二人は言葉を発することなく目的の場所へと向かった。
「───」
他愛もない会話をしていたシオンは言葉を切るとスッと立ち上がる。
「動きました」
シオンの台詞にアルクェイドとシエルが立ち上がる。
「そ、じゃあわたし達も」
「無論です」
「志貴君と七夜君の寝顔拝見と行きますか」
三人が三人ともニイッと笑うといそいそと部屋を出ていった。
「みなさん動きましたか」
庭にいた琥珀は雑草の除去を止め、館の方を見る。
そしてしばし思案し、
「・・・・・・やはり録画したものよりも生の方が美味しいですね」
ポンと手を叩くと大急ぎで片付けを始める。
「待ってくださいね〜志貴さん、七夜さん。私が行くまで是非とも目を覚まさないでいてくださいまし〜」
ほんの僅かな時間で片付けを済ませると琥珀は大急ぎで目的地へと向かった。
「しかし・・・夢魔の能力は便利だな」
周りを見回しながらそう呟く七夜。
「えへへ〜」
「・・・で、お前は本当に幸せそうだな」
七夜は呆れたように目の前でケーキを食べている志貴を見る。
「・・・・・・」
同時に志貴の側でケーキを食べていた少女がジッと七夜を睨んだ。
「お前等は。か」
「七夜君も好きでしょ?」
「ま、甘くなければな」
妙な脱力感を覚えた七夜は志貴の向かいの椅子に座るとテーブルの上に置かれていた紅茶を一口飲む。
「甘くないものはこれくらいか・・・」
ため息を吐く七夜に志貴はコクンと首を傾げる。
「このケーキはそんなに甘くないよ?」
「・・・・」
七夜はニヤッと笑うと席を立ち、志貴の側に行くと
「どれ・・・」
そう言って志貴の口の端に付いているクリームをなめた。
「・・・甘いな」
「もうっ、七夜君は!舐めたら駄目だよ!!」
「・・・・・・」
「ほらほら。小さなお姫様が不機嫌になってるぞ」
「レン?」
「七夜君好きって何・・・?」
「可愛い兄さんとワイルドな兄さん・・・」
「夢魔を使って夢の世界で何を・・・」
「舐めたら駄目・・・舐めたら駄目・・・」
「なんて想像をかき立てられる事をしているんですか・・・」
「志貴さんが受け受け光線出してますよ〜〜〜」
グッスリと眠っている二人が時折発する言葉に一同はベッドを取り囲み、顔を赤らめながら聞き入っていた。
そしてその観賞会は志貴達が目覚めるまで延々と続いた。
ある日曜の昼下がりの出来事だった。