突撃!大嘘Fate連載
「昔は正義の味方に憧れていた」
切嗣は昔を懐かしむようにそう言った。
「だがな―――最近気付いたんだ」
切嗣は士郎をジッと見つめる。
「正義の味方には敵対すべきムチムチプリンプリンな悪役ヒロインが必要なんだって・・・」
しみじみと、しみじみとそう言った。
「必要なんだ・・・そう、敵対すべき・・・そしていずれは正義の味方と手を携えて共に悪を討ち果たす真ヒロインが・・・」
「や、それを―――俺にしろと言うのか・・・?それはちょっと酷な話だと思うぞ?」
「幸い士郎は女の子になっている・・・これは恐らく大いなる何かが決めた事なのだろう・・・士郎。これからは衛宮志姫と―――」
「やだ」
全身全霊を駆けたコンマ02の拒否。
「正義の味方なら兎も角、何で悪のヒロインなんだよ!」
士郎は必死に反論するが切嗣は遠い目をしたまま話を続ける。
「冗談。―――これからは衛宮恵美と名乗りその萌えっぷりを惜しみなく発揮してくれ・・・」
「ネーミングセンス悪っ!!それにいつかは戻るんだから隠し通してしまえば・・・どのみち俺はヤダ」
「もう遅い・・・病院その他諸々に手を回し今頃戸籍は書き換えられているはずだ」
「なっ・・・」
「これが、僕の遺言だ・・・ああ・・・えみえみは本当に可愛いなぁ・・・」
勝ち誇った笑顔でそう言いながら息を引き取った衛宮切嗣。
そして彼の死を合図に始められた長き戦い・・・
『えみえみ』に萌えた数多くのモノ達の戦―――
それから数年後―――
その戦いは新たなる段階を迎えていた。
十年ぶりに起きる『聖杯戦争』
それに巻き込まれる形となった衛宮恵美。
サーヴァントと呼ばれるモノ達を駆使した戦い。
しかし―――
「その程度ではえみえみ争奪戦で一年も生き残れないのよ」
竹刀でサーヴァント『ランサー』を屈服させるタイガーマスクの女
「その程度の剛力でワシのえみえみを取ろうなど百世紀早いわ!」
サーヴァント『バーサーカー』を肉弾戦で打ち負かすライガーマスクの男
「ふん、その程度の呪詛、我が一喝にも劣る!」
大喝でサーヴァント『キャスター』の術を撃ち破る桐生寺の小倅
「答えて・・・答えてよ・・・僕はどうしたら良いんだ・・・教えてよ!えみえみ!!」
部屋の隅でガタガタ震える没落魔術家系の長男坊
今、かつて無い戦いの幕が開く
その渦中にいる本人は―――
「ン、お出汁はこのくらいが良いかな・・・」
切嗣の意志に一部反して普通に生きていた。