注意:この作品は『常にはない日常:拠ん所ない風景 』の続きです。

 

 

 

 

 

既に日課となってしまっている夜間巡回。

今日は昼間からアルクェイドも先輩も恐ろしいまでの殴り合いをしていたせいで夜間巡回には参加出来ない。

喧嘩の原因はとてつもなく情けないものだったが、二人とも本気でやり合っていた。

先輩なんて不死の体でもないのにアルクェイドの攻撃を気合と根性ではじき返していたし・・・

結果、ダブルKOで全治一晩。

アルトルージュちゃんがアルクェイドの介抱をしてくれて、セヴンちゃんがいつも通り先輩の介抱してくれるとのこと。

どのみち戦闘力の高い人達は今日はお休み。

だから俺一人で夜間巡回をする。

秋葉はかなり嫌な顔をするが俺としては未だに死徒がいるかも知れないのに何とか出来る人間がのうのうと家でくつろいでいるなんて出来ない。

だから秋葉を拝み倒して何とか夜間巡回に行かせてもらっている。

まぁ、シオンが家にいるから最近秋葉は暇をしてないというのもあるのかも知れない。

昔と変わらないなぁ、秋葉は・・・遊び相手がいないからって俺を掴んでいたしなぁ。

―――そんなことはさておき、俺は裏路地へと足を向ける。

先ほどからずっと誰かがついてきている。

そいつを人目のないところへ誘導するためだ。

相手は離れることも距離を詰めることもなく、一定の距離を保って俺の後をついてくる。

何故だろう。凄く、緊張している。

アルクェイドや先輩とやり合った時のようなプレッシャー

隠しても隠しようのない圧倒的な力を感じている。

この街に此処までの奴が残っていたのか・・・?

嫌な汗が流れる。

そして、

カツン―――

裏路地の再奥、袋小路にたどり着いた。

俺は相手の気配に気を配りながら敵となるべき相手を見る。

「―――――――――――――え?」

そこには一人の女性がいた。

身長は俺より少し低いくらい。

格好は俺ととても似ている。

とてもスタイルが良くてキリッとした美人。

ちょっとキツイ目。

しかしその目は魔眼を発動させている時の俺と同じ眼。

とても、イヤな予感がした。

「志貴」

「は、はい、何でしょうか」

思わず低姿勢な反応をしてしまった。

最近女性に逆らえない体になっている自分が恨めしい・・・

そんなことを思いながらその女性の動向を窺う。

「志貴・・・ちゃんとお前好みの女性になったぞ」

「――――――――――――――――――――――え?」

一瞬、自分の中の時が止まった。

「まさか・・・・・・七夜?」

「それ以外の誰が居る?」

アッサリと、本当にアッサリと彼女―――七夜はそう言い放った。

「えっと・・・」

「さあ、これで何も問題はないはずだ。結婚しよう!」

綺麗なお姉さんタイプの七夜に言われてイヤとは言い辛いけど・・・

「いや、問題は山積してるよ・・・」

「何?」

七夜が眉を顰めた。

少し、怖い。

「だってさ、俺と同じ存在なら戸籍とかが・・・」

「その件に関しては錬金術師がハッキングをして戸籍を捏造したから問題ない」

シオン・・・君は本気で引き篭もり界のゴッドになるつもりなんだね・・・

チョッピリ涙が出てきた。

「これなら問題はないだろう?」

「因みに名前は?」

「七夜紫姫。紫の姫と書く」

「確かに姫っぽい・・・・・・ああ、あの二人の姫が仕掛けたことだからなぁ・・・」

「決めたのは秋葉、翡翠、琥珀の三人だ」

「――――――だからアッサリと夜間巡回にいかせてくれたんだ・・・」

みんなの手の平の上で踊っていたのか・・・

チョッピリ鬱だ・・・

「志貴・・・その、迷惑・・・だったか?」

七夜が悲しげに俯いている。

「へ?イヤ、その・・・そんなことはないけど・・・」

言ってて墓穴を掘っているのは分かっている。

でも泣かせたくない。男として

「本当か?」

「すぐに結婚というのは・・・まずはお友達から・・・」

何言っているんだ俺!!

「半身たる存在なのにお友達・・・」

「あ、あの、七夜?」

「―――そうか。半身とはいえ私を一人の女性として接するということか」

ちょっと、待て―――

「で、ではその・・・デートとか・・・」

一人顔を真っ赤にして盛り上がる七夜を止めることが出来なかった。

今までにないタイプの登場に俺は思いっきり振り回されるしかないのか・・・

「さあ、愛し合おうか」

顔を真っ赤にしながら七夜が俺に近付く。

「ちょっ、やめっ!!」

俺は七夜から逃げるために自身の力をフルに使い裏路地から脱出し、夜の街へと逃げた。