「やはりシロウの作る料理は何を取っても美味しい」

セイバーは幸せそうに俺の作った料理を食べている。

食べる直前までの複雑な顔が嘘のようだ。

事の発端は商店街の福引きだった。

商店街の店主達が出資しあって開催される福引き。

少し時季外れな気もしたが、向こうの思惑なんて俺達が知るはずもない。

その福引きの最終日、俺は溜まりに溜まったチケットを持って抽選会場に向かった。

結果、特等と1等は逃したものの、2等の中華料理5名様招待券等を当てた。

しかしそこに思わぬ落とし穴があった。

そのチケットには『女性限定』というただし書きがこれ見よがしに書かれていたのだ。

半端にせこいな・・・商店街店主一同。

そんなことを思いながら俺はチケットを藤ねぇに渡し、みんなで行くようにと渡した。

当初の予定ではうちに入り浸っている女性陣全員を予定していた。が、

しかし俺が行かないと言うことでセイバーが「行かない」と言い出したのだ。

理由は明白。セイバーは俺を守るという職務を全うしようとそう言ったのだ。

言い出したら聞かないセイバーの性格をみんな知っているため、藤ねぇと凛、イリヤと桜、そして後誰か一人を連れて行くことになった。

みんなが出かけた後、よほど食べたかったのかセイバーは少し落ち込んだ様子だったため、俺は腕によりをかけた料理でセイバーを慰めることにした。

伊達に主夫は長くない。

そして手元には4等の商店街お買い物券3000円分がある。

今日は豪華にしようと俺は気合いを入れて買い出しに出かけた。

 

幸せそうに食べ、美味しそうに飲みながら食事は終了した。

セイバーのそんな幸せそうな顔を見ているだけで俺も「ああ、作って良かったな」と幸せな気分になれた。

「まさかワインまで買ってくるとは思いませんでした」

セイバーは少し赤みがかった顔で洗い物をしている俺に声を掛けてきた。

「半分は料理用に、半分はセイバーのものって買ってきたから」

俺はそう言いながら半分どころか3分の1も使わなかった事を思い出し苦笑する。

今回の出費はお買い物券を引いて2000円。

食費だけで言えば1000円のものだった。

ただ、一番高かったのはワイン。

あまり安いのはいけないと思い、酒屋の店主が薦めてくれたワインを買ったのだ。

俺としては手痛い出費だが、セイバーが喜んでくれたので良しとしておこう。

片付けを終えた俺は居間を覗く。

「───まさかとは思ったけど・・・」

そこにはスゥスゥと寝息を立てて眠っているセイバーの姿があった。

「いつも頑張っているからな・・・」

ずっと気を張っていたセイバーの姿を思い出し、俺は目を細める。

眠っているセイバーの頭をそっと撫でる。

「ここで寝かせるわけにもいかないか・・・」

そんなことを呟きながら撫で続けていたら、

ファサッ

髪留めを外してしまった。

「うぁ・・・・・・」

サラリとした髪。

あどけない寝顔。

その姿にグラリと来たが、俺は必死に煩悩を祓い、セイバーを抱き上げた。

「ッと・・・軽いな」

こんな華奢な体で闘っていたのかと改めて自分に怒りがこみ上げてきた。

いくら特殊な存在だからとはいえ、セイバーは女の子。

「そう言ったら『侮辱です』って怒られたな・・・」

そう呟きながら、セイバーの部屋まで連れて行く。

 

「───あ・・・そうだった」

当たり前と言えば当たり前だが、そこに布団は敷かれていなかった。

フウッとため息を吐き、最近万年床と化している自分の部屋へとセイバーを連れて行くことにした。

「暫くここで我慢していてくれよ」

眠っているセイバーに俺はそう言い、そっと俺の布団に寝かせる。

「ん?」

その時初めて俺は袖を捕まれていたことに気付いた。

「・・・・・・起こすわけにもいかないしな」

その寝顔があまりにも安らかだったため、俺は躊躇する。

屋敷には結界が張られているから外部から悪意や敵意を持った相手が来たらすぐに分かる。

「ま、大丈夫だろ」

俺は何も起きないことを祈りセイバーと共に布団にはいる。

凄く間近にセイバーの顔がある。

それだけで洒落にならないほど心臓がバクバクと音をたてる。

「っ・・・これじゃ寝れない・・・」

理性と欲望が数時間近くぶつかり合い、結局両者とも力尽きて俺は深い眠りに落ちていった。