休日の朝から叩き起こされ、朝食後は秋葉から普段の生活についてまで怒られてしまった。

一時間後に有彦が来たと言うことで解放され、自室に引き揚げる頃には一日分の精神疲労を負っていた。

「はぁ〜ホント参っちゃうよ・・・」

俺はにベッドに転がって大きなため息を吐いた。

「志貴さんはまだマシですよ〜わたしなんか苛められるだけじゃなくて改造までされるんですよ!?」

第七聖典の精霊、セブンちゃんが涙目で俺を揺さぶる。

「いや、うちも下手するとクスリ混ぜたりいびられたり酷いもん」

「・・・・・・そうですよねぇ・・・そちらは二人がかりみたいですからね」

「うい・・・・・・唯一翡翠が最後に助けてくれるけど・・・最後に」

「ああああ・・・ほら志貴さん、落ち込まないでくださいよ」

「ふふふふ・・・・・・全てが終わった後に助けられても自分が惨めなだけなんだよ?そのまま放置されていれば狂犬に噛まれたと思って泣き寝入りで済むけど・・・・・・」

「きょ、狂犬の段階でかなり拙いのでは・・・」

青ざめた顔でアウアウと呻くセブンちゃん。

「遠野・・・お前は美人な妹とメイドさん達だから羨ましいよ。俺なんて姉貴に撃って抓って引っぱたかれる日常だぞ?これと比べればお前のはまだマシな方だ」

人の苦労を知らずに有彦が仰々しいため息を吐くながら俺に不幸自慢してくる。

「お前は素行が悪すぎるんだよ」

正論で切り返してみる。

「う゛っ・・・・・・」

どうやら有彦も一応は自覚しているみたいだ。

「そーですよ有彦さん。一子さんは間違ったことを言っていません!」

「うおっ!?テメェ!」

「確かに一子さんは間違ったことを言うような人じゃないからね」

「遠野・・・お前まで・・・ジギタリスお前もか!」

「それはブルータスじゃ・・・」

「覚えてやがれ!!」

「あーあ・・・泣いちゃいましたね・・・これじゃ何しに来たのか分かりませんね」

「逃げ足では最速だからな」

「有彦さんって人ですよね・・・」

「逃げ足では100m9秒は切れるな」

「ですね・・・そう言えば志貴さんはうちのマスターからも苛められているんですよね?」

「苛めというかとばっちりというか・・・アルクェイドと先輩がぶつかる時には必ず中心にいるからねぇ・・・」

思わず遠い目をしてしまう。あの二人を前にしたら絶対的な死が待っているだけに悟りの一つや二つくらい簡単に悟れるのではないだろうか・・・

「良く生きてますね」

「多分それに運使い果たしているから他で酷い目に遭ってるんだと思う」

「うわぁ・・・それから考えるとわたしはまだマシですね。死にませんし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺はいっそ一思いに殺して欲しいかな」

死にそうな体なのに外傷ではなかなか死なないんだよなぁ・・・俺。

「先々週は生死の境彷徨ってましたからね」

「ああ・・・思いっきり流れ弾が当たったからね。避けても避けきれる代物じゃないし・・・外灯は」

「左腕の半分は持って行かれてましたからね」

「あの時は流石に危なかったよ・・・先輩とアルクェイドが全力で治してくれたから助かったけど」

「―――と言うよりお二人が悪いのでは?」

「ま、ね。一応罰は与えたし」

「一週間半径100m以内に近付くなとか言うアレですか?」

「ああ。じゃなければ一生口きかないって言ったし」

「無茶苦茶落ち込んだマスターを見たのは久しぶりでした」

「あちゃぁ・・・それじゃあアルクェイドはもっと落ち込んでるかな・・・後で夕食作りに行ってやろうかな」

「そうしてあげてください。マスターにもお願いしますね」

「うん。分かったよ・・・ところで、君はどうしようか」

「マスターが立ち直ったらわたしを引き取りに来てくれると思いますから」

「そっか・・・セブンちゃんはいい子だね」

セブンちゃんの頭を撫でてあげると嬉しそうな顔で俺に抱きついてくる。

「えへへ・・・・・・」

「じゃあまずは先輩のところから行ってくるよ。『セブンちゃんが「落ち込んでいたから慰めてあげろ」と言っていた』ってね」

「ありがとうございます〜」

「じゃ、行ってくるよ」

「はい〜いってらっしゃ〜い」

俺はセブンちゃんに見送られて部屋を後にした。