――――――私は常に見ている。

 

アルクェイド・ブリュンスタッドを通して世界というものを

 

――――――私は常に感じている。

 

全ての感覚を研ぎ澄まし、世界というものを感じている。

 

――――――だが、ある日を境に私の意識は深淵へと落とされた。

 

一人の人間の手によって

 

私がその体を失ったのは私の目論見に気付いたある人間との闘いによってだ。

相打ちとなったものの奴を殺すことは出来なかった。

肉体を失った私は新たな器を求め、真祖達が作り出した究極の兵器、アルクェイド・ブリュンスタッドにたどり着き、その魂の一部となった。

そして力を蓄え、乗っ取る準備していた。

だがしかし、それはある日ご破算となった。

よりにもよって人間がアルクェイド・ブリュンスタッドを殺したのだ。

それは直死の魔眼による殺傷。

生まれてきた時にいずれ乗っ取りやすいようにと感情という者を持たぬように設定させた傑作をよりにもよって再構築させねばならぬほど見事に殺したのだった。

そして再構築された時に世界が手を加えてきた。

―――感情のあるアルクェイド・ブリュンスタッドに作り替えたのだ。

これでは私が乗っ取ることは容易でなくなった。

よりにもよって感情というモノを植え付けられたのだから。

 

 

再構築を終えたアルクェイド・ブリュンスタッドはその身を殺した者を探し出し、落ちた己の力をサポートさせようとした。

が、それも私の誤算であった。

アルクェイド・ブリュンスタッドはその人間を好きになっていたのだ。

私もその人間に興味を持った。

アルクェイド・ブリュンスタッドをを分割した人間・・・

ただの人間であることはアルクェイド・ブリュンスタッドを通して分かっているのだが、それでも気になっていたのだ。

やがて好機が訪れた。

奴はノコノコとアルクェイド・ブリュンスタッドの意識の中に進入してきたのだ。

共に眠ることで意識が引き込まれる形となったのだろう。

しかし私にとっては好都合だった。

城の中でオロオロする奴に私は声をかけた。

奴の驚いた顔が私を楽しませてくれた。

だが奴は口を開けばアルクェイド・ブリュンスタッドのことばかり聞いてくる。

私は少々苛立った。

何故、奴なのだ?と。

そして奴を分割した。

奴がアルクェイド・ブリュンスタッドを解体したように。

 

 

私は微睡みの中、奴を待つ。

奴がまたノコノコとやってくるのを待っている。

――――――これが、楽しいという感情か?

よくは分からない。

が、不快ではない。

奴との下らない会話を思い出しながら私は微睡みの中で奴を待つ。

あのお人好しの奴ならばこう言ってくれるだろう。

―――お前なぁ・・・

と、呆れたような怒ったような顔で私に分割して殺したことを抗議してくるだろう。

私はそれが楽しみだ。

待て、楽しみ・・・・・・だと?

おかしい。

私はこの世界を真世界に戻す為の存在。

その私があの人間との逢瀬を待ち望んでいると?

理解しがたい。

自分という者の考えが理解しがたい。

まさか、あの人間はこの私すら殺したというのか?

思わず笑ってしまった。

それならば次に奴が来た時にこう言えばいい。

アルクェイド・ブリュンスタッドが言ったように

―――私を殺した責任、取ってもらうからね

と――――――