夕方。いつもの公園。
今日はここでアルクェイドと待ち合わせをしていた。
来たときにはいつものようにベンチに座って待っていた
そして俺を見つけるなりニパッと笑い、俺に飛びついてくる。
「ねーねー志貴〜〜」
───今日は特にハイテンションだな・・・
「何だよ」
「今日はクリスマスだよね」
「そうだな・・・」
「でね、クリスマスプレゼントとわたしのお誕生プレゼントをまとめて一つで良いから欲しいな〜」
「ンだよ・・・・・・高いものはあげられないぞ?」
「大丈夫。欲しいのは志貴だもん」
「あ〜なるほど。それはただ・・・・・・・・・!!??」
「志貴ちょーだい♪」
その台詞がその場を戦場へと変えた。
戦地からのクリスマス(泣)
「何言いやがっているんですか!」
シエル先輩の怒声と共に天から十数本の黒鍵が降ってきた。
「おわああああああっっっ!?」
ドドドドドドドドドドドドッッ
俺とアルクェイドを分断するように黒鍵が地面に突き刺さる。
「むっ・・・・・・『頭隠して尻隠さず』で有名なシエルだにゃ!?」
「このど阿呆!!使う場所間違いです!」
ガサガサと茂みから先輩が姿を現した。
「えー?じゃあいつもノーパンという噂が絶えないシエル・・・」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!誰がそんなデマを流したんですか!?」
「わたし」
「こ、殺すッ!!」
―――最近、いらん学習能力が付いてきたな・・・アルクェイド・・・・・・
「やれるものならやってみろ〜デカ尻シエル〜」
「もう勘弁なりません!」
「元々堪え性のない性格なのに何言ってるの?」
「が〜〜〜〜〜っっ!!」
「あの、スミマセン・・・」
「いやぁ最近じゃ慣れてきてしまっているから・・・でもセブンちゃん、キミも大変だね」
「そうなんですよ・・・昔はもっとまともな人だったんですけど最近では・・・」
「カレーの病がねぇ・・・」
「そうなんですよ・・・少しでもシエル=カレーのイメージを払拭させようとスパゲティを食べているんですけど」
「うわ、それこそ嘘くさい・・・」
「ですよね!?」
もしこの風景を見ている人がいたらきっと自分が正気か疑っていると思う。
人の領域を越えた闘いをしている横でノンビリと蹄をもつ少女と談笑する俺。
我ながら異常な世界だと思った。
ガスッ!
と、何かもの凄い打撃音が聞こえ、先輩が茂みの中へ送還されてしまった。
「あ〜あ・・・じゃ、介抱の方お願いね」
「はう〜・・・頑張ります」
セブンちゃんは思いきり深いため息を吐きながら茂みの中に入っていった。
「もぉ・・・シエルが服メチャメチャにした・・・」
子供がお気に入りの服を泥で汚したような顔で俺を見る。
「はぁ・・・・・・分かったよ・・・これでも着てろ」
俺は着ていた学ランを脱いでアルクェイドに投げ渡す。
「えへへ〜志貴の服〜」
アルクェイドは嬉しそうに俺の服を抱き締める。
「志貴の匂い〜」
「返せ」
そんなことを言われたら凄く恥ずかしいんだよ!
「ヤダ!貰ったもん」
「待て、帰る間だけそれを着ていろって事だ!」
「え〜〜〜〜っ!?」
不満げな表情のアルクェイドだったが、その顔が次第に落胆に変っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かったよ。それをやるよ・・・それがプレゼントだ」
「え?・・・・・・・・・・・・・うんっ」
キョトンとした顔をしたアルクェイドだったが、すぐに満面の笑みを浮かべると学ランを着た。
「志貴〜夕食作って」
「そうだな。誕生日でクリスマスだ。作ってやるか」
俺達は夕飯の献立を話し合いながら公園を後にした。
「遠野くん〜わたしも服が・・・・・・」
「マスターはすぐに直せるで・・・・・・ヒイイッ!」
茂みの中で呻くシエルと介抱したにもかかわらず酷い目に遭っているゼブン。
彼女等がどうなったかはまた別のお話――――――