どうしよう。落ち着け俺!

アルクェイドと俺は普段何をしているんだ?!

色々考えを巡らせ、出した結論。それは

 

流れに身を任せ―――

 

────そうか。いつも通りなんて特別なことを考えようとするからいけないんだ。

気付けば楽なモノだった。

一緒に食事をし、他愛もないお喋り・・・・そして

「・・・・添い寝?」

「何だ?」

「ああ・・・んっと、アルクェイドと同じ事だよね?」

「ああ」

「食事のあとは他愛のないお喋りとか」

「・・・・・・・ではそのようにしろ」

いや、そのようにしろと言われても・・・・会話が続かないし。

初っぱなから挫折ですか?

「うーん・・・・あとは、添い寝とか・・・・散歩とか」

ああ、そっか。散歩だ。散歩に連れて行こう!

俺は朱い月を連れて公園に行くことにした。

 

 

休日だけに公園は結構な人がいた。

その中で俺達は特に目立っていた。

良い意味でも悪い意味でも・・・・

視線が痛い。

朱い月も少し表情が険しく、俺の手を握る力が少し痛い。

――――ご免なさい嘘吐きました。とても痛いです。

俺は少し早足で人混みを避ける。

暫く公園内を散歩し、自販機の前に立ち止まる。

「何か飲みたいものはある?」

「・・・・・・わざと言っておるのか?」

口をちょっと尖らせてぶっきらぼうにそう言った。

あ、ちょっと拗ねてる。

「いや、興味を引くようなモノがあるかと聞いているんだけど・・・」

と、朱い月がある一点をジーッと見ていた。

それは

『百ぱぁせんとぶだうどりんく』と銘打たれたブドウジュースだった。

いや、そのネーミングもどうかと思うけど、そんな怪しげなモノが普通に売ってるんだ?

「・・・・・これ、欲しいの?」

コクン

小さく頷く。

うわ、なんか可愛すぎるんですけど?

「じゃあこれだな?」

そう言って投入口にお金を―――――

・・・・何故こんなジュースが500円もするんだ?

思わず躊躇ってしまったじゃないか!

「どうした?」

朱い月が不思議そうな顔をする。

「いや、何でもないよ」

グッバイ俺の500円

心の中でそう言いながら500円を投入する。

ガタン

商品が落ち、それを朱い月に手渡した。

残念ながら俺の分を買う事は出来ない。

財布の中は76円しかないのだ。

「どうした?そなた自分の分は買わぬのか?」

缶を両手で持ち、不思議そうな顔で俺を見詰めてくる。

「ああ。俺は今飲む気が起きないから。それに君に色々体験させるのが目的だからね」

口調は大人びているが、体は子供。

あの姿とでは違和感がないが、この姿だと────違和感と言うよりも微笑ましい。

彼女にとってこれは夢のようなモノかも知れない。

だったら悪夢なんかより楽しい夢の方が良いはずだ。

離れたベンチに腰掛ける。

「開け方は・・・・分かるようだね」

プルトップを立てて開けるのと俺が聞くのはほぼ同時だった。

「愚問だ」

当然といった表情の朱い月。

そして缶を両手でしっかり押さえ、ジュースを飲む。

「―――ぁ」

少し驚いたような、嬉しそうな、そんな顔。

「そっか。良かったな」

言葉は無かったが、そんなに喜んでくれたのなら買った甲斐があったな・・・・

そう思っていたら、朱い月がジッとどこかを見ていた。

「・・・・・・・」

少し離れた所に親子が居た。

子供がジュースを飲み、父親はボーっと空を眺めていた。

まあ、俺等と同じ散歩に来たんだろう。

子供が飲んでいたジュースを父親に渡す。

父親は困ったような顔をしたが、やがて一口だけ飲み、子供に返した。

うん。微笑ましい光景だ。

そう思っていた矢先、

「し、志貴・・・・」

朱い月が俺を呼ぶ。

「何?」

「そなたも飲め」

「ん?・・・・サンキュ」

缶を受け取る。

それは良い。が、

何故、顔が赤い?

ジッと俺のこと見ているし・・・・

朱い月を気にしながらほんの少しだけジュースを飲む。

うん。美味い。

「ありがとう。美味しかった」

納得して朱い月に返す。

「・・・・・・・・」

何か、さっきよりも顔が赤いですじょ?

挙動不審な朱い月に首を傾げながら暫く公園で時間を潰した。