「えっと・・・」

何と言えばいいのか

分からない。

何故俺がここにいるのか。

そして何故先生が俺を抱えているのか・・・

クリスマスイヴ。

今日が俺の命日になりそうな予感全開です。

 

 

 

 

 

ナイト・ないと?

 

 

 

 

 

「あの・・・先生?」

俺は先生に抱きかかえられた状態のまま先生に問う。

「何?」

「どうして俺は先生に抱えられているんですかね」

「そうねぇ・・・今愛の逃避行真っ直中なのよ」

先生は困ったような顔で笑う。

「や、訳分かりませんって・・・」

「じゃあ目を覚ます前・・・気を失う前を思い出したら?」

そう言いながら先生はビルとビルの間を跳んだ。

記憶を辿る。

───軽い頭痛がする・・・俺は一体何をして・・・

「・・・・・・・・・・・・」

そう。

俺は有彦のところで遊んでいて、イチゴさんに「クリスマスイヴだから」と俺がイチゴさん用に買ってきたお酒を飲まされて・・・

有彦も調子に乗って俺を酔わせようとして・・・えっと・・・

とりあえず帰ってこいと電話が掛かってきて、

その時はまだ完全には酔ってなかったからってそのまま有彦の家を出て、

外が寒くて少し歩いたら急にフラフラして・・・

──────マズイ。そこから先の記憶がない。

冬だというのに汗が出た。

「ごめんなさい。友達の家を出てからの記憶がありません」

「そこまで思い出せたらOKよ」

先生はニンマリと笑い、地面に着地した。

「ある程度お酒は抜けているでしょ?」

そう言って俺を降ろした。

 

 

「何となく、ね・・・志貴の家に顔を出したのよ」

「はい?」

「らしくない話なんだけどね。クリスマスは独りで居たくなかったのよ」

先生は苦笑し、俺の顔を見る。

「でも明日はクリスマスでお姫様の誕生日。だから今日志貴と過ごしたいなぁって思ってね。行ってみたの」

「や、行ってみたのって言われても・・・」

どう返答して良いか分からない。

そうしているうちに一件の古めかしい。しかし高級そうなレストランの前で先生の足が止まった。

「私が奢るから少し入らない?」

確信犯的なその発言に思わず苦笑してしまう。

「先生の誘いを断るわけないじゃないですか。俺、今日は少し持ち合わせがありますから俺が出しますよ」

少し前に何となく買ったクジが良い感じに当たって最近は少し懐が暖かい。

たまにはこんな日があっても良いかな。と、軽い気持ちで先生の手を取って店に入った。