最近どうも眼鏡があわない。

どうやらフレームの交換時期のようだ。

かといって普通のお店で交換すると場合によってはかなり待たされる時がある。

それだけは避けなければならない。

店内で目を瞑っているわけにもいかない。

それに魔眼殺しを外したら目の色が瞬間的に変化するわけだから店の人に何を言われることか・・・

下手するとレンズをいじられるかもしれない。

そればかりはゴメンだった。

だから──────

 

俺はあの草原に寝転がっていた。

そしてやってきた人物は、

「やっ、志貴。そろそろ交換時期でしょ?来てあげたわよ」

先生がフレーム交換してくれている。

何故かタイミングもピッタリだ。

「今回はどんなフレームが良いかな〜やっぱり野暮ったいフレームで可愛さを隠した方がいいかな?」

「任せますけど・・・俺可愛くないですよ」

一応否定はするが先生はいつも通り聞く耳を持たない。

「志貴、眼鏡を外すから目を閉じて」

鞄の中から縁の厚いフレームを取りだし、先生は目を閉じるように言った。

俺は言われるままに目を閉じた。

と、

「んっっ・・・」

「!?むっん・・・んぅっ・・・ん・・・・・・」

突然頭を固定され、思いっきりディープなキスをされた。

思い切り口腔を舌で蹂躙され、息を奪われ呼吸するのも忘れるほど口腔内を徹底して攻められた。

「んっっぅ・・・・・・・ッぷはぁっ!!」

「んっっ・・・ごちそうさま」

呼吸が出来なかったためかクラクラする頭をおさえ、目を開けようとすると、

「おっと、ちゃんと交換してあげるから目を開けない♪」

先生の楽しそうにそう言った。

───確実に遊ばれているよ・・・

俺は盛大なため息を吐き、交換してくれるのを待った。

 

 

「ねえ志貴」

「何ですか?」

カチャカチャとレンズをいじる音が聞こえる。

「志貴は私のことどう思う?」

「先生の・・・事ですか?そうですね・・・・・・俺にとって先生は命の恩人で俺をこんな風にした人・・・って言ったら変ですかね?」

「こんな風って?」

「俺がひねくれたりせずに普通に生活して育つことが出来たのも先生のおかげですからね」

「これのことだったら別に良いのよ。そうじゃなくて私個人のことをどう思っているのかって事よ」

「先生個人ですか・・・・・・と言われても先生のこと詳しく知らないですからね・・・調べようがないですし・・・」

少し困ったような顔をし、首を傾げる。

「聞きたくないの?」

「先生は俺にとって大切な人で命の恩人ですからそれだけで充分ですよ。先生、何だか言いたくなさそうですし」

「私はそんなに善人じゃないんからね・・・」

「俺にとって先生はいい人ですよ」

「むしろ私は極悪人よ?」

「ン〜〜〜・・・先生は俺のことどんな人間だと思いますか?」

「志貴の事?可愛い子♪」

「茶化さないでくださいよ・・・」

「そうね・・・志貴はそんな途方もない魔眼を保ちながらひねくれたりせずに真っ直ぐ育った・・・それだけで充分称賛に値するわ」

カチャカチャと工具と何かが当たる音がした。

「実は俺、結構悪いコトしてるんですよ」

「へぇ・・・」

「うわ、サッサと流しましたね?」

「当たり前じゃない。志貴はそんなこと出来るような子じゃないって私が一番知っているもの」

「え?」

「志貴は自分の思うように生きているから真っ直ぐ生きているのよ」

「??」

「あ、その首の傾げ方可愛い」

「あ、あのですねぇ・・・」

「はい、お終い。手をかけて外さない限り外れないように細工もしておいたから」

「え?ありがとうございます」

チャッ

眼鏡を受け取り、掛けて目を開ける。

「潤んだ目もなかなか可愛い♪」

「せんせぇ・・・・・・」

「・・・・・・志貴がいい人かどうか訂正」

「え?」

「志貴は凶悪な子よ」

突然厳しい目で俺を見た。

「え?ええっ?」

「凶悪なまでに可愛い子・・・先生、志貴のこと本気になっているもの」

「?」

「そして凶悪なまでに鈍感・・・罪よ?それは」

「あ、あの、先生?」

「志貴。これまでのメンテナンス代・・・体で払って貰うわ」

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈍感な志貴にはこうして教えないと私が好きだって分かってくれないんだから」

「ううぅぅ・・・・」

「ちょっと腰が重いわ・・・志貴ったらあんなに可愛くてあんなに凄いから」

「酷いよ先生・・・しかもこんな外で襲うなんて・・・」

「だって・・・志貴が私をここまで狂わせるから悪いのよ」

キッパリと答える先生に俺は反論する気力を根こそぎ奪われた。

「えううううぅぅぅぅ・・・・・・」

「ここまで執着したのは初めてよ・・・志貴。もう絶対離さない・・・」

「あ、あのぉ・・・」

「何?」

「後ろ・・・・・・」

「ええ。知ってるわ」

「迂闊でした・・・まさかブルーがそこまで夢中だったなんて・・・」

「志貴はわたしのなんだからこれ以上くっつかないの!」

「たとえ誰であろうとも兄さんを私から引き離そうとする人は敵です」

「逃がしませんよ〜」

「志貴様、またわたしを置いて行かれるのですか?」

「今マジックガンナーに志貴を取られるわけにはいかないのです」

「わたしは今既成事実を作ったのよ?」

「「「「「「わたしもです」」」」」」

「志貴・・・・・・」

みんな酷いんだ・・・止めてって言っても微笑みながら押し倒して身包み剥いで・・・笑いながら襲ってくるんだ・・・

「「「「「「「(汗)」」」」」」」

「ほ、ほら、志貴があまりにも可愛くお茶菓子を頬張るからおねーさん我慢出来なくって」

「そ、そうだよ志貴。志貴が可愛い顔でお願いしてくるからわたし暴走しちゃって・・・」

「兄さんが・・・兄さんがいけないんです!湯あたりしてあんな姿をさらすから・・・」

「おねだりする子犬のような顔でわたしの部屋に来る志貴さんがいけないんですよ〜」

「ぎゃ、逆指チュパする志貴様がいけないのです。その姿があまりにも艶めかしくて」

「研究の疲れを癒して貰うために一肌脱ぐと言った志貴に甘えただけです・・・」

「志貴、総受けなのね・・・」

「平穏が・・・平穏が欲しいよぉ・・・」

さめざめと泣く俺に先生が

「受け受けしくて可愛い志貴が悪いのよ。諦めなさい」

幸せそうに微笑みながらそんな酷いことを言った。





そして数日後、先生も遠野の屋敷の住人となった。