「機動性だけでもそれだけあれば無敵だと思うけど」

「因みに力はどのような状態であっても非力らしい」

「駄目じゃん」

ジョーさんが悪いわけではないが、ジョーさんに突っ込みを入れた。

が、ジョーさんはそんなことを気にした様子もなく更にノートを読み進める。

―――もしかして、スルーされた?

「それだけではない。『魔法少女っぽく二段変身する』・・・とも書かれてある」

その台詞に僕は絶句するしかなかった。

そして

ゴクリ―――――

キャスターさんが唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

 

 

遠野志貴(変身前):154センチ 75.52.75

     現在魔眼どころか魔術回路も膨大なリーサルウェポン。

     背後にいるタイガーな人と共に聖杯を手に入れて元の姿に戻ろうと画策する。     幸せ空回りで更に男女関係なく落とす辺り前より悪化している。

     機動力は桁違いな速さだが、腕力・握力共に通常以下。

     ただし、術式起動の場合は魔法少女っぽく二段変身する。

 

    (変身後):170センチ 88.57.86

     機動力は通常レベルまで落ちるが、マジックガンナークラスの力あり。

     性格も七夜に近いものとなり、クールビューティなキャラ。

     腕力・握力共に人並みだが、防御力はランクB以下の攻撃をキャンセルできる。

 

     ある一定条件を満たすと更にもう一段変身できるが?

 

 

「・・・・と、こうなっているらしい」

ジョーさんがどこからともなくテロップを出して見せた。

「・・・・まともな説明になっていない気が・・・・しかもわざわざスリーサイズまで」

呆れると言うよりも泣きたくなる。

「そして術式の起動法だが・・・・まぁそれは必要になれば教えよう」

そう言ってテロップをしまう。

「と言うことは、今は闘うことは無いってこと?」

「そうだ。まだ戦争は始まっていない。もしその前に仕掛けてくる愚か者がいればこの私が鉄拳制裁をくれてやろう」

「お願いします」

「うむ。ではさらばだ」

フォンッ

ジョーさんは姿を眩ました。

「何者なのですか?あの男は」

キャスターさんはジョーさんの気配が無くなったのを確認して僕に聞いてきた。

「別の世界で偶然知り合ったんだ。この世界に戻ってくる方法を教えてくれた人だよ」

僕の台詞にキャスターさんは複雑な表情で考え込む。

「あの男はこの世界で何をしようとしているのか・・・・マスターは兎も角、あの男はこの世界にとってイレギュラーな存在。もしかすると世界の流れが変わるか、修正が働く可能性があります」

「あの手帳を持っていれば修正を受けないとか・・・・」

「あれが本物ならば充分考えられるわね・・・」

冗談半分でそう言うと、キャスターさんは真剣に考え込んでしまった。

 

 

「―――泊まるところ、どうしよう・・・」

「ここで良いのでは?」

「こんな高そうなところ!?それに身元がしっかりしていない僕が泊まれるわけないじゃないか」

「お金は沢山あるのですよね?ものは試しと言うではないですか」

「・・・・・そうかな」

ニッコリと微笑みながら言うキャスターに促されるまま二人はロビーへと向かう。

「あの、宿泊したいのですが・・・・」

「ご予約の方、既に承っております」

「え?」

「6階の10号室となっております」

「え?あ、はい・・・・・ありがとうございます」

志貴は何が何だか分からないままルームキーを受け取る。

「狼狽えるしーちゃんも可愛い・・・・」

「ハァ・・・・先に行きますよ」

恍惚の表情でキャスターに見詰められ、志貴は疲れ切ったため息を吐きながらエレベーターへと向かう。

そしてエレベーターの前で思い出したように立ち止まった。

「あれ?6階って・・・バゼットさんって人のいる階じゃ・・・」

「部屋はセミダブルかしら・・・しーちゃんと同じベッドで添い寝なんて・・・」

「ねえ、聞いてる?」

「え?しーちゃんからのお誘いなら大歓迎よ?」

「・・・・・・・もういいや。キャスターさんの話は今後無視するから」

「そんな殺生です!令呪無しで何でも言うこと聞きますから無視だけは!」

「どこまで中毒なんですか・・・・」

呆れながらそう呟く志貴。

「しーちゃんと繋がっているって思うだけで・・・・ハァハァ」

涎を拭うような仕草をするキャスターに志貴は冷たい視線を浴びせる。

「───令呪の解除の仕方って書かれてたかな・・・」

「ストップ!今のは冗談ですから!」

「本当に?」

「う゛・・・・20パーセントは本心です」

「全部じゃないだけマシかな・・・」

流されつつある志貴だったが、エレベーターが6階で止まり、

「───争が始まればあの子が真っ先に狙われます。援護を・・・・ぁ」

エレベーターのドアが開くとそこには一組の男女がいた。

止まること約一秒。

「あの、失礼します」

志貴は二人にペコリとお辞儀をし、キャスターの手を引いて10号室へと向かった。