「はっ、放せ!」
「あの子に先に目をつけたのは僕だ!」
「くっ、外道が!私は聖職者という立場から身内のいない彼を引き取ろうと・・・」
「それなら他の子ども達を引き取ってやれ!」
うるさいなぁ・・・
僕がそう思った矢先に、
「見舞いの方が―――」
「「げっっ!豪腕看護婦!!」」
「院内で・・・騒がないでちょうだい!」
ドドンッッ
ものすごい音がして外が静かになった。
「杉本のおばちゃんはやっぱり強い・・・」
僕の中に杉本婦長最強伝説の土台が出来た瞬間だった。
「や、やあ・・・元気だったかな?」
ズタボロな姿のおじさん達が部屋に入ってきた。
一人はうっすらと記憶がある。
確か僕を助けてくれた人・・・二人いたうちの一人。
「うん・・・助けてくれたおじさん」
「良かった・・・元気になったんだな」
おじさんはホッとしたような顔で僕の頭をなでた。
僕は後ろでお腹を押さえながら立っているおじさんを見る。
「───おじさん誰?」
「お、おじさん・・・」
あれ?なんか凄く落ち込んでる・・・
「ごめん、まだお兄さんの年齢なんだけど・・・」
うわぁ・・・凄く傷つけちゃった・・・
「ご、ごめんなさい・・・」
「ふふふふ・・・いいさ。老け顔なのは自覚していたよ」
おじ、お兄さんはそう言って苦笑いする。
「突然だが、君がそろそろ退院できると聞いてね。引き取りに来たんだよ」
おじさんは後ろのお兄さんを僕に見せないように移動しながらそう言った。
「え・・・?」
突然だったから、何を言われたのか分からなかった。
「もし君が良ければ、だけど・・・僕と一緒に暮らさないか?」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
「───もし、もしイヤなら孤児院に行く事になるんだけど・・・」
おじさんは静かに、僕に言い聞かせるようにそう言った。
「・・・」
突然言われても・・・頭の中がゴチャゴチャして分からない。
「考える時間はある。そうだな・・・退院の前日までには決めて欲しいな」
「・・・・・・退院は明日と聞いたぞ」
お兄さんが本気で呆れたような口調で突っ込む。
でもおじさんは
「あ、そうだっけ?」
───本気で忘れていたみたいだった。
「仕方ないな・・・じゃあ5分で決めてくれないかな?」
「「おいっっ!!」」
僕とお兄さんは同時に突っ込んだ。
不安だ・・・このおじさん、どうして今まで生きてこれたんだろう・・・
僕はこのおじさんにとても興味がわいた。
それに僕を助けてくれた人だ。
僕は小さく深呼吸をして、
決めた。
「僕、おじさんと一緒に行く」
はっきりと、僕はそう言った。