「―――と言う訳なの」

「タイガ。それだけじゃ分からないよ」

「む、良いの!士郎と私は以心伝心の間柄だから!」

「いや、まったくわからん・・・」

 

 

 

 

 

内裏でGO!

 

 

 

 

 

三月三日。

いつも賑やかな衛宮邸が更に人で賑わっていた。

「お内裏様は俺でお雛様はセイバーだな」

ニヤニヤと笑いながらギルガメッシュが士郎の頭をポンと叩く。

「歯ぁ食いしばれ!」

そう言いながら凛がギルガメッシュの腹部に二重の極みを放った。

グシャッ

何かトンデモナイ音と共にギルガメッシュが庭先まで吹き飛び、地面に叩き付けられバウンドする。

「ゴハッ!?な、何を・・・」

「本性雑魚は引っ込んでなさい」

凛がそう言いながらチャラチャラとある宝具を見せる。

凛が手にしていたソレはギルガメッシュにとってとてつもなく重要な代物。

―――それは鍵剣―――

「あああっ!!返せ!!」

起きあがれないのかギルガメッシュは匍匐前進でズルズルと戻ってくる。

「これがなければ最弱サーヴァント!モノに頼ってしか強さを誇示できない金ビカに内裏の資格無し!」

「いや、最弱じゃないぞ・・・」

そうフォローするアーチャーだったが、誰もわざと聞かないフリをした。

「ぐぉぉぉ・・・・・・たかが人間風情が・・・」

洒落にならないくらい悔しそうな表情で凛を睨むギルガメッシュ。

しかし立ち上がれず腹部を押えながら半座り状態の様はなかなか無様だ。

「その人間のスクリューナックルをモロに受けてバウンドして呻いてる貴方に言われたくはないわね」

「・・・アレを喰らったら誰だって・・・なぁ」

「―――お前の所のマスターって本当に人間か?」

「アーチャー、ランサー、何か言った?」

「「何も言っておりません」」

凛の一睨みに二人は綺麗にハモって返す。

「くっ・・・このまま人間風情に屈するわけには!」

いい感じにボディを喰らってしまったためかガクガクと震えている足を叱咤しながらギルガメッシュは立ち上がる。

が、そこにイリヤが悪魔ッ子の笑みを浮かべながら、

「虎、襲え」

大河を嗾けた。

「虎っていうな〜」

そう叫びながらもギルガメッシュの左手に噛みつく。

どうやらイリヤの合図が大河の遺伝子レベルの条件反射のトリガーになっているようだ。

ようやく起きあがれたギルガメッシュの隙だらけの左手を―――

カプッ

「あだだだだだだだだだっっっ」

左手を丸ごと食われてしまったギルガメッシュは情けない声をあげながら走り回る。

「なんだ。元気じゃないの」

イリヤはニンマリと笑う。

「悪魔ッ子だ・・・」

「調教師だな・・・」

あくまで傍観者を徹することで自身への被害を防ごうと考えている二人はそろってイリヤの視界から隠れた。

庭先でギャイギャイやっているそんな中、

「し、シロウ・・・」

セイバーが恥ずかしそうに奥の部屋から出てきた。

「え?・・・・セイバー!?」

士郎はその姿を見て完全に固まった。

理由は十二単を纏い、お雛様の格好をしているセイバーを見たため。

「似合って、いませんか?」

固まった士郎にセイバーは悲しそうな表情をし、俯く。

「え、あ、いや、・・・凄くキレイだ・・・」

「シロウ・・・」

「セイバー・・・」

二人の空間を形成するセイバーと士郎。

その空間に無理矢理割り込んできたギルガメッシュこと金ピカ。

「ッ・・・セイバー、俺の側に相応しい格こあだだだだだだだだだ!!!

しかし台詞も満足に言う暇なく大河の更に強い噛み付きで再び振り払うための全力疾走を始める金ピカ。

殴ってでも外すという思考がない辺り手遅れキャラになっている。

「お笑いキャラだな・・・」

「なんて・・・無様」

言いたい放題言う傍観者二人。

「マズイ」

そして手に食らいついたまま愚痴を言う大河。

「そう思うなら囓るな!!」

叫ぶギルガメッシュは既に半泣きだった。

「あ、あの・・・誰か準備を手伝ってくれませんか・・・」

「聞いていないようですね・・・」

ギャアギャア騒いでいる一同を見回し、キャスターはため息混じりの返答をし、桜を見てギョッとした。

「──────ふ、ふふふふふふ・・・」

口元は笑みを浮かべているがその目はそこにいる全てのモノ達を見下すような瞳だった。

「あ〜あ・・・サクラがイッちゃった」

イリヤが「あ〜あ」とぼやき、ポケットから一枚の写真を取りだす。

「サクラ〜イイものあるよ〜」

そう言ってイリヤは桜に取り出した写真をちらつかせた。

瞬間、

ヒュバッッ

何か疾風のようなものがイリヤの側を駆け抜けた。

そして目の前にいたはずの桜が姿を消し、イリヤの手にあったはずの写真も消えていた。

「ああっ先輩のセミヌード・・・脱衣シーンなんて・・・」

「・・・・・・人、なの?」

「ここで人間って言ったら士郎ぐらいかな。生身でまだ人の領域超えてないし」

桜の動きを目で追うことが出来ずに呆然とするキャスター。

そして「いつものコト」と異常な日常に適応しているイリヤだった。

そんな中、

「セイバーとライダーの着付けは終わった。次はキャスターとイリヤだ。早く来たまえ」

部屋の奥から言峰神父が現われた。