「私が今回の主役だと思ったけど・・・私の志貴に何してるの?」

横からそんな声がした。

 

 

青子vs朱鷺恵 景品は志貴

 

 

―――うわぁ・・・・・・ホンッと勘弁してよぉ・・・・・・

志貴は泣きたいのをグッと堪え二人を見る。

片方は鍼灸の針と畳針を両手に構えて戦闘準備。

もう片方は鉄粉入りのパワーグローブっぽいものを装着している。

・・・どちらも殺る気満々だ・・・

「わたしの志貴にナニするつもり?」

―――先生。アクセントが違う気がしますが・・・

「ふふふ・・・ナニするつもりかしら・・・それに志貴くんはわ・た・し・のよ」

―――朱鷺恵さん。何ですかそのネットリとした視線は・・・・・・

心の中でそれぞれの言葉に突っ込むが、口には出さない。

出したら矛先は確実にこちらに来るから・・・

志貴は体を必死に動かすが首から上―――頭以外は全く動かなかった。

―――このスキルはマジでどこから得たんだろう・・・

志貴がそんな事を考えている間にも会話は進む。

「あら?私が8年前に予約したのよ?」

「うふふ・・・私はそれ以上前から狙ってたのよ?」

バチバチバチバチ

「志貴は私を選ぶに決まってるのよ」

「それはどうかしら・・・志貴くんの瞳は私しか映らないもの・・・」

バチバチバチバチ・・・・・

「志貴は私のお婿さんになるって言ってくれたわ」

「志貴くんは私とこの診療所をやっていくの看護夫として・・・」

―――朱鷺恵さん・・・今は看護士です。看護夫ってなにさ・・・

「志貴となら服のままで(検閲削除)したり(検閲削除)したりできるわ!」

「志貴くんとなら看護服で(検閲削除)や(検閲削除)もできちゃうわよ?」

バチバチバチバチ・・・・・

―――サーバーさんからクレーム来るよぉ・・・やめてよぉ・・・

既に泣いてしまっている志貴にそれは訪れた。

ブルルッ・・・

「と、トイレ・・・・・・」

志貴は尿意を感じ、慌てる。

しかし全くと言っていいほど身動きがとれないため、流石にマズイと判断した志貴は必死に動かない身をよじる。

「〜〜〜〜っ!〜〜〜〜〜っっ!!んっ、んんっ!!・・・・ん〜〜〜っ!!」

声を出すまいと口を閉じて力を入れていたが、途中からそれすら意識しなくなったのか含んだ声をあげ始めた。

ビクビクッッ!!

その声に言い争っていた二人は電気ショックを受けたような震えを起こし、

「「し〜き〜」」

両者とも好色の目で志貴を見た。

「ん〜〜〜〜〜っ・・・・!?」

どうしても動かないので一息吐いたところ、二人がこちらを見ているのに気付いた。

「ァ、あの・・・・二人と、も・・・?」

志貴はとてつもない不安を感じた。

「どおしたの?志貴・・・先生にナニがシたいのか言ってごらん?」

「そうよ志貴くん・・・お姉さんにナニがシたいのか言わないと分からないわよ?」

ジリジリと迫ってくる二人。

しかし志貴にはそれを危機的状況と判断する前に

「あ、あの・・・・お手洗いに・・・」

顔を真っ赤にして視線をやや下に向けてボソボソという志貴。

二人のツボに嵌った。

そりゃもうど真ん中だった。

「ナニ?聞こえないわよ?志貴・・・」

「そうよ志貴くん。もうちょっとハッキリ言ってくれるとお姉さん嬉しいな」

二人は脳内メモリーに志貴の全てを最高画質で記録しながらそんな事を言う。

「あ・・・・あの・・・トイレに行きたいのでこれ、取ってください・・・・・・」

志貴はこれ以上ないくらい真っ赤な顔と潤んだ目(既に泣いてるって)でそう言った。

二人は

「「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」」

狂喜乱舞していた。

もう脳内リフレインしまくり。

脳内麻薬もドバドバ出まくって他の次元にいるブラザーやシスターにその様子をリプレイして見せてたり。

要は二人ともあっちの世界に逝ってしまっていた。

そんな中、

キィン

何か音がして志貴の体は動けるようになった。

「!?じいさん!!」

「しっ!ワシはすぐ逃げるからお前さんは好きにせい!!」

「ありがとう・・・・・・」

志貴は好機とばかりに時南医院へ駆け込んだ。

そして数分後、裏口から全力で逃げ出した。

一方二人は

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

・・・・・・まだ帰ってきていなかった。